賞与の基本を押さえる!賞与制度の概要とモチベーションへの効果について
この記事では、賞与の基本的な定義や種類、支給要件に加え、日本と海外における賞与に対する捉え方の違い、そして従業員のモチベーションを向上させるためにはどのような施策が有効であるかについて解説します。
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賞与とは
定義
国税庁 「法令解釈通達 法第183条《源泉徴収義務》関係」によると、賞与とは以下のように定義されています。
「所得税法第183条第2項に規定する賞与とは、定期の給与とは別に支払われる給与等で、賞与、ボーナス、夏期手当、年末手当、期末手当等の名目で支給されるものその他これらに類するもの 」
一般的にはボーナスとも呼ばれ、会社の業績や個人の成績に応じて支給されます。
賞与の支給に関しては就業規則や労働契約などで定められています。
賞与の種類
賞与は大きく分けて基本給連動型賞与、業績連動型賞与、決算賞与の3種類があります。
基本給連動型賞与
基本給連動型賞与とは、毎月支給される基本給に連動して支給される賞与を指します。日本では一般的な賞与制度で「基本給の〇か月分」といった形で算出されます。
業績連動型賞与
業績連動型賞与とは、会社の業績や個人の成績・成果に応じて支給される賞与を指します。
前述の基本給連動型賞与と組み合わせて、基本給を基準として成績に応じた数を乗じた金額を支給する混合型を採用している企業もあります。
決算賞与
決算賞与とは、その年度の利益を従業員に分配する目的で支給される賞与を指します。業績が良い年度では支給される金額は大きくなりますが、業績が悪い年度は場合によっては支給されない可能性もあります。
賞与の支給について
賞与支給の要件
賞与の支給要件については、企業が自由に決めることが可能です。ただし、不当に賞与の支給額に差をつけると違法とみなされる可能性があります。支給対象者や支給要件は慎重に検討しましょう。
支給対象者
賞与の支給は必ずしも全従業員を対象にする必要はなく、「正社員のみを対象にする」というように一部の従業員限定で支給することが可能です。
ただし、2021年4月から全面適用された「働き方改革」の中で厚生労働省は「正社員と非正規雇用労働者の間で、基本給や賞与などあらゆる待遇について、不合理な待遇格差を設けることが禁止」しており、同様の業務に携わっている従業員間で雇用形態のみを理由に賞与に差を設けると違法とみなされる可能性があります。
↓「働き方改革」の詳細はこちらをご覧ください↓
また、そのほかの条件として
- 賞与の査定期間に勤務している実績があること
- 支給日に在籍していること
などを要件にしている企業が一般的です。
賞与支給の時期・回数
賞与の対象者と同様に支給する時期や回数についても企業が自由に決めることができます。「基本給連動型賞与」や「業績連動型賞与」は夏季賞与として6月下旬から7月中旬、冬季賞与として12月中旬ごろの年2回支給することが一般的です。「決算賞与」を支給する場合、決算日の翌日から1ヵ月以内に支給することが一般的です。
賞与とモチベーションについて
モチベーションとは
モチベーションとは、何かを達成しようとする意欲や欲求を指します。モチベーションが高いと仕事の効率が上がり、逆にモチベーションが低下すると、目の前のタスクへの集中力が欠けて生産性が低下するといわれています。企業の業績や成長にも大きく影響するため、従業員のモチベーションを向上させることは企業にとって重要な要素の一つだといえます。
モチベーションの種類
モチベーションには大きく分けて「外発的動機付け」「内発的動機付け」の2つがあるといわれています。
外発的動機付け
外発的動機づけとは報酬や評価などの外部の要因によって動かされるものを指します。例えば、昇進や給与アップなどがこれに該当します。
内発的動機付け
内発的動機とは、興味や好奇心といった自分自身の中から生まれる感情によるものです。例えば「楽しい」「やりたいからやる」といった、報酬や評価ではなく自発的な感情からくるものが該当します。
マズローの欲求段階説
モチベーションについて様々な理論が提唱されていますが、最も有名なものの一つが「マズローの欲求段階説」です。これは人間の欲求には5段階あり、低次の欲求がみたされると高次の欲求を求めるようになっていくという理論です。
①生理的欲求
生理的欲求とは、マズローの5段階説の中で最下層の第一段階の欲求です。この階層は、食事や睡眠、排せつといった人間が生きていくための本能的な欲求を示した階層です。
②安全欲求
安全の欲求とは、安全性・経済的安定性・健康な状態の維持・事故の防止など、予測可能で秩序だった状態を維持しようとする欲求です。
③社会的欲求
社会的欲求とは、集団に所属することや他人に必要とされることに対する欲求のことです。「帰属欲求」「所属と愛情の欲求」といわれることもあります。
④承認欲求
承認欲求とは、自分が集団から価値のある存在だと認められ、尊重されることを求める欲求のことです。承認欲求には2段階あり、低い次元の欲求は尊敬や名声、注目などの他者からの承認によって満たされるのに対し、高い次元では自己尊重や自己信頼など自分自身の評価によってみたされます。
⑤自己実現欲求
①~④までの欲求がすべて満たされたときに生まれる、自身の持つ可能性や能力を最大限発揮したいという欲求です。例えば「自分らしく生きたい」といった欲求がこれに当たります。
この理論では、①②の「物質的な欲求」が満たされることによって心理的安全性が担保されるため③④⑤の、より高次な「精神的な欲求」を満たすための積極的な行動が生まれるといわれています。
日本と海外における賞与に対する捉え方の違い
賞与とモチベーションの関係について理解するためには、賞与に対する捉え方についてきちんと認識する必要があります。ここでは、欧米における賞与の位置づけと比較しながら説明いたします。
アメリカやカナダといった北米の国を中心に、欧米諸国ではボーナスは「特別配当」のような形で業績に連動して支給されるケースも多く、一定水準以上の業績を上げた場合にのみ支給されるものと認識されている傾向にあるといいます。
また、これらの国では賞与の支給対象は、経営に関わることの多い管理職以上に限定されている場合もあり、あくまで業績に対する対価という位置づけであるといえるでしょう。
マイナビ転職グローバル「海外転職Q&A 」より
一方日本では、夏と冬に支給されることは確約されていることからもわかるように、欧米のような業績に応じた特別配当というよりは、勤勉な勤務態度に対する対価という意味合いが強く、「真面目に勤務をしていれば、だれもがもらえるもの」という捉え方が一般的といえます。
ではなぜこのような違いがうまれたのでしょうか?
それは賞与のルーツが異なる点にあります。
鹿島建設の歴史を解説した「鹿島建設の軌跡」によると、
賞与は、元は「餅代」から発展したものといわれている。
江戸時代、暮れになると商家や職人の主人から番頭・手代へ「餅代」という名で包み金が支給された。また、住込みの丁稚・手代が唯一休める盆正月の薮入りには、主家から「身綺麗にして田舎へ帰りなさい」と小遣いとお仕着せが支給された。これらが賞与の起源といわれている。
とあります。当時の奉公人には年間を通じて給与は支払われていなかったともいわれており、「賞与=給与、小遣い」という意味合いが強く、現代の認識にもつながっているのかもしれません。
鹿島建設「鹿島の歴史 第6回 賞与の始まり 」より
賞与はモチベーションにつながらない?効果的な評価制度とは?
日本における賞与は、「もらえるのが当たり前、給与の一部」といった要素が強いというお話をしましたが、賞与は本当にモチベーションを上げる効果があるのでしょうか。
ボーナス払いという言葉があるように、日本では賞与ありきで年間の支出を計算する方も多いです。こういった状況をマズローの欲求段階説に当てはめて考えてみると、賞与が満たしている欲求とは、経済的安定性を求める②の「安全欲求」が該当すると考えられます。
「安全欲求」とは「生理的欲求」と合わせて物質的欲求に分類され、生命維持に不可欠な欲求であるといわれます。
このことから、こと日本においては、毎年決まった額の賞与を支給するだけでは、生命維持に不可欠な欲求を満たすだけにとどまり、従業員のモチベーションは企業が想定しているほど上がっていない可能性があるのです。
従業員のモチベーション向上におすすめの施策
従業員のモチベーションを向上させるには、マズローの欲求段階説でいう「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現欲求」といった精神的欲求を満たすことが求められます。ここではおすすめの2つのサービスをご紹介します。
ポイント型インセンティブ
株式会社リロクラブの「ポイント型インセンティブ」は、ポイントを付与して業務の成果やプロセスを評価するインセンティブ制度です。 業務成果やプロセス以外にも、勤続表彰や健康促進、改善提案回数といった様々なシチュエーションでポイントを付与できるのが特徴です。
「従業員の誕生日をお祝いする」といった柔軟な制度設計が可能で、社内のコミュニケーションツールとしてもご活用いただけます。
インセンティブ制度導入をお考えの方はリロクラブの「ポイント型インセンティブ」をご検討ください。
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ポイント型サンクスカード
株式会社リロクラブの「ポイント型サンクスカード」は、従業員間でポイント付きのメッセージを送り合えるサンクスカード制度です。日々の業務の中で、忙しさや恥ずかしさから直接伝えるのはできなかったこともサンクスカードを利用することで気軽に送り合うことがことが可能です。
「ありがとう」だけでなく「おめでとう」「よろしく」など、カードの内容は自由に設計可能で、自社にあったメッセージカードを設定することができるため、コミュニケーションの活性化が期待できます。
サンクスカード制度導入をお考えの方はリロクラブの「ポイント型サンクスカード」をご検討ください。
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まとめ
この記事では、賞与の概要と日本における賞与の位置づけについて解説しました。一般的に従業員のモチベーション向上に効果があるとされる賞与制度ですが、効果を上げるためには業績連動型で支給をしたり、算定の条件を見直したりといった工夫が必要です。また、日本での賞与の性質上どうしても既得権益化しやすい側面もあるため、よりモチベーション向上の効果を大きくするためには賞与に代わる手段も検討する必要があるかもしれません。
この記事を通じて、既存の賞与制度のあり方を見直したり、今後のモチベーション向上施策を考えるきっかけになれば幸いです。