パート・アルバイトも福利厚生は適用される!適用状況や要件、メリット解説!人気の福利厚生例も!
近年、非正規雇用者の処遇改善や人材確保を目的に、フルタイムの正社員だけでなく、パート・アルバイトにも福利厚生が適用される傾向にあります。
福利厚生は、企業にとっても従業員にとっても多くのメリットをもたらす企業制度であり、その重要性や必要性はますます増しています。
本記事では、パート・アルバイトへの福利厚生の適用状況や要件、メリットを解説します。さらに、具体的な福利厚生例についても詳しくご紹介します。
パート・アルバイトの離職防止や採用強化にご関心のある経営者や企業のご担当者は、ぜひ参考にしてみてください。
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パート・アルバイトも福利厚生を利用できる?
パート・アルバイトも福利厚生は利用できます。
かつて福利厚生といえば、正社員だけが利用できる風潮にありましたが、近年では働き方やニーズが大きく変化しており、パート・アルバイトといった非正規社員にも福利厚生を提供する企業が徐々に増えてきています。
その背景には、労働人口の減少や働き方の多様化といった社会情勢の変化や、「同一労働同一賃金」の考えのもと、従業員間で不合理な待遇差を設けることを禁止している法律なども影響しています。
ただし、パート・アルバイトが福利厚生を利用するためには、一定の条件を満たす必要があります。要件については「パート・アルバイトへの福利厚生の適用要件」で解説します。
パート・アルバイトと正社員との違い
そもそも、パート・アルバイトと正社員は、どのような違いがあるのでしょうか。
それぞれについて詳しく解説します。
パート・アルバイトとは?
パートやアルバイトは、同じ「パートタイム労働者」に分類されます。
厚生労働省では「パートタイム労働者」を以下のように定義しています。
1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者
パートタイム労働法ではパートとアルバイトに区別はなく、同義とみなされます。
正社員とは?
正社員は、法律上の定義はありませんが、一般的には期間の定めのない労働契約を締結しているフルタイム労働者(無期雇用フルタイム労働者)を指します。
パート・アルバイトへの福利厚生の適用が拡大した背景
パート・アルバイトに対して福利厚生の適用が拡大している背景には、労働人口の減少や人手不足が理由として挙げられます。
そこで、近年は人材確保のために正社員に限らず、さまざまな雇用形態の従業員の採用に力を入れる企業が増えてきています。
2024年(令和6年)8月時点の総務省統計局の「労働力調査」によると、労働人口のうち、パート・アルバイトを含む非正規雇用者の割合が全体の37%を占める結果が出ています。(前年同月に比べ0.6%増)
その中で、パート(18%)とアルバイト(8.2%)が占める割合は合計26.2%と、全体の4分の1以上の割合を占めており、パート・アルバイトが企業にとって貴重な労働力であることが明らかです。
<参照>総務省統計局/「労働力調査 (基本集計) 2024年(令和6年)8月分」
パート・アルバイトに関する法律
パート・アルバイトに関する法律には、「パートタイム・有期雇用労働法」があります。
パートタイム・有期雇用労働法とは、厚生労働省が定めた非正規雇用者の労働環境の改善や不合理な待遇差の是正を目的とする法律で、2020年4月に施行されました。
この施行により、企業はパートタイムなどの労働者に対して、職務内容や責任が同等である場合には正社員と同様の待遇を提供する必要があります。
すべての労働者が公正な環境で働く権利を持ち、雇用形態の違いによる不平等が緩和されることが期待されています。
具体的には、パートタイム労働者に対して所定労働時間を超えて残業をさせないよう調整したり、「同一労働同一賃金」の観点から、賃金格差を設けることを禁止したりしています。
また合理的な理由なしに、正社員に適用している福利厚生をパート・アルバイトに対して適用しないことも禁止されています。
<参照>厚生労働省/「パートタイム・有期雇用労働法のあらまし」
パート・アルバイトへの福利厚生の適用状況は?
パート・アルバイトを含めた非正規雇用労働者への福利厚生の適用状況が気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
厚生労働省が実施した「令和3年パートタイム・有期雇用労働者総合実態調査の概況」では、パートタイム労働者(無期または有期)への手当や各種制度の実施、福利厚生施設の利用状況について下記の結果が出ています。
無期雇用パートタイム:
常用労働者のうち、企業(事業所)に直接雇用されている労働者で、期間を定めずに雇用されており、かつ、1週間の所定労働時間が同一の事業主に雇用された通常の労働者(正社員)に比べて短い労働者。
有期雇用パートタイム:
常用労働者のうち、企業(事業所)に直接雇用されている労働者で、1年契約、6か月契約など期間を定めた労働契約により雇用されており、かつ、1週間の所定労働時間が同一の事業主に雇用されている通常の労働者(正社員)に比べて短い労働者。
有期雇用フルタイム:
常用労働者のうち、企業(事業所)に直接雇用されている労働者で、1年契約、6か月契約など期間を定めた労働契約により雇用されており、かつ、1週間の所定労働時間が同一の事業主に雇用されている通常の労働者(正社員)と同じ労働者。
いずれの就業形態においても、「通勤手当」を支給している企業が6割以上を占めていることが分かります。
その他、「休憩室の利用」「更衣室の利用」などの福利厚生施設の利用も比較的適当率は高く、これらの福利厚生はパート・アルバイト向けに浸透していることがうかがえます。
一方、「定期的な昇給」「人事評価・考課」「家族手当」「住宅手当」などを行っている企業は3割以下であり、手当や福利厚生制度の種類によっては、パート・アルバイトと正社員の間に差があるのが実状です。
<参照>厚生労働省/「令和3年パートタイム・有期雇用労働者総合実態調査の概況」
パート・アルバイトへの福利厚生の適用要件
パート・アルバイトでも、一定の要件を満たせば福利厚生が適用できます。
ただし、福利厚生の適用要件は法定福利厚生と法定外福利厚生で異なるため、あらかじめ注意が必要です。
法定福利厚生と法定外福利厚生の違いは、以下の通りです。
●法定福利厚生:「法律で義務付けられた」福利厚生
●法定外福利厚生:「法律に関係なく企業が自由に実施できる」福利厚生
法定福利厚生の要件
企業がパート・アルバイトに対して法定福利厚生を適用する場合は、以下の要件を満たす必要があります。
<健康保険・厚生年金保険>
健康保険と厚生年金保険は、雇用形態にかかわらず、フルタイムで働く労働者、または週所定労働時間及び月所定労働日数がフルタイムの4分の3以上の労働者が対象となります。
保険料は、企業がそれぞれ半額を負担します。
加えて、2024年10月から従業員数51人以上の企業は、所定労働時間がフルタイムの4分の3未満であっても、以下のすべての要件を満たす労働者の加入が義務付けられています。
● 週の所定労働時間が20時間以上
● 月額賃金が88,000円以上(残業代・賞与などを除く)
● 雇用期間の見込みが2か月以上
● 学生ではない(夜間・通信制などは除く)
社会保険の適用拡大に関する詳細は、厚生労働省の特設サイトをご確認ください。
<参照>厚生労働省/「パート・アルバイトのみなさま(社会保険適用拡大 特設サイト)」
<介護保険>
介護保険の適用要件は、健康保険・厚生年金保険と同様です。
ただし、年齢が満40歳以上65歳未満のパート・アルバイトが対象になります。
介護保険料は、健康保険・厚生年金保険と同じく、企業が半額を負担します。
<参考>厚生労働省/「パート・アルバイトのみなさま(社会保険適用拡大 特設サイト)」
<雇用保険>
雇用保険の適用要件は、以下の通りです。
● 契約開始日から31日以上働く見込みがある
● 1週間あたりの労働時間が20時間以上
雇用保険料は「給与額×雇用保険料率」で算出されます。また保険料率は毎年見直しがあるため、企業の担当者は常に最新の保険料率を確認しましょう。
<参考>厚生労働省/「雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか!」
<労災保険>
労災保険は、パート・アルバイトを含むすべての従業員が対象で、保険料は全額企業負担です。
<参考>厚生労働省/「労災補償」
法定外福利厚生の要件
法定外福利厚生は、企業ごとに提供する内容や条件が異なるため、適用される基準も企業によって異なります。
そのため、パート・アルバイトに福利厚生を適用する場合、福利厚生の内容や利用条件を就業規則や賃金規定などで定め、周知するようにしましょう。
ただし、前述した「同一労働同一賃金」の観点から、不合理な格差を生まないよう注意することが必要です。
パート・アルバイトに福利厚生を適用させるメリット
企業が正社員だけでなく、パート・アルバイトにも福利厚生を適用させると様々なメリットがあります。
今回は主に3つのメリットをご紹介します。
生産性の向上
1つめのメリットは生産性の向上です。
福利厚生を充実させると、従業員が職場に対してより強い満足感や向上心を持ちやすくなり、働きやすい職場だと感じるでしょう。
正社員だけでなく、パート・アルバイトにも福利厚生を適用することで、自身の待遇に納得感や平等感をもって仕事に取り組むことができるため、雇用形態にかかわらず、すべての従業員のモチベーション向上や満足度向上に寄与できるでしょう。
従業員が長く働き続けられる環境を整えることで、従業員のエンゲージメントや帰属意識が高まり、結果的に生産性の向上と企業の業績向上が期待できます。
労働力の確保
2つ目のメリットは労働力の確保です。
総務省統計局の「労働力調査」の通り、パート・アルバイトの割合は全労働者のうち約4割を占めており、企業にとっては重要な労働力です。
その中で、パート・アルバイトにも福利厚生を適用している企業は、従業員側にとってはニーズに合った福利厚生が利用できると長く働きたいという気持ちが高まり、離職率の低下にもつながります。
また福利厚生が充実している=ホワイト企業というブランドイメージの向上にもつながるため、求職者へも魅力的な企業としてアピールができて、優秀な人材の確保が可能になるでしょう。
節税対策ができる
3つ目は節税対策に有効である点です。
法定外福利厚生は、下記の3つの要件を満たせば、非課税対象となる福利厚生費として計上することができます。
<福利厚生費として計上するための要件>
① 全従業員が対象になっているか
② 金額に妥当性があるか
③ 現金支給ではないこと
積極的に法定外福利厚生を充実させることは、節税対策にもつながるメリットがあるのです。
▼福利厚生費の仕組みについてさらに詳しい記事はこちら↓
人気の福利厚生の具体例
パート・アルバイトに福利厚生を適用するとなると、具体的にどのような福利厚生が喜ばれるのでしょうか。
ここでは、様々な福利厚生の中でも、特にパート・アルバイトに人気の福利厚生の具体例をご紹介します。
健康診断
「労働基準法」により、下記基準に該当するパートタイム労働者に対して企業が健康診断を実施することが義務付けられています。対象となる従業員の条件は、以下の通りです。
● 1年以上雇用していること、または雇用期間を定めていないこと
● 1週間の所定労働時間が正社員の4分の3以上であること
上記に該当する従業員へは、雇用形態にかかわらず、健康診断を受けさせる必要があります。
条件を満たしていなくても、週の所定労働時間が正社員の1/2以上の場合は「健康診断の実施が望ましい」とされています。
<参照>厚生労働省/パートタイム労働者の健康診断を実施しましょう!!
健康診断を実施することは、従業員にとっても企業にとって安心して働ける環境の整備につながります。
従業員にとっては、費用負担を企業側が行うことで「大切にしてくれる会社だ」と感じ、より職場への定着率が高まります。
また全従業員に対して健康面のサポートが手厚い企業は、従業員の健康管理を積極的に行っている優良企業として対外へのアピールポイントにもなるでしょう。
施設・店舗などの割引
例えば飲食店やホテルなどの場合、自社のサービスや運営施設を割引価格で利用できる制度や、自社商品を社員割引価格で購入できる福利厚生もおすすめです。
これらは従業員自身の満足度を高めるだけでなく、自社のサービスや商品を実際に利用することで、自社サービスの理解度や関心度向上にも寄与するため、仕事の質を高めることも期待できます。
自社サービスの割引が難しい企業や店舗の場合は、企業向けに様々なジャンルのメニューを取り揃えている福利厚生アウトソーシングサービス会社と契約し、従業員が施設や店舗で使える割引や優待を利用できる福利厚生制度を整えるとよいでしょう。
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フレックスタイム制度
多様な働き方を支援するフレックスタイム制度も人気の福利厚生の1つです。
フレックスタイム制度とは、「あらかじめ定められた総労働時間の範囲内で、始業や終業の時間、日ごとの勤務時間を調整できる制度」のことで、従業員それぞれがライフスタイルに合わせて柔軟に働けるため、プライベートと仕事を両立したい従業員にとっては魅力的な福利厚生制度です。
正社員登用制度
正社員登用制度を福利厚生として導入することで、仕事に対するモチベーション向上につながり、長期的な人材確保が可能になります。 パート・アルバイト自身の経験やスキルをそのまま活かせるため、人材育成に時間をかけずに組織力や生産性を向上できる点もメリットの1つです。
パート・アルバイトにも積極的に福利厚生を利用してもらおう
本記事では、パート・アルバイトを対象にした福利厚生について深く掘り下げ、適用要件やメリット、人気の福利厚生例などを解説しました。
社会全体の労働環境が少しずつ変化している今、企業は雇用形態にかかわらず、従業員が可能な限り充実した福利厚生を享受できるよう努める必要があります。
特に「同一労働同一賃金」の考え方が広まりつつある現代において、正社員だけでなく、パート・アルバイトを含むすべての従業員が公平に扱われることは、企業としての信頼性を高めることにもつながります。
法定福利厚生はもちろん法定外福利厚生も充実させて、従業員や求職者に選ばれる企業を目指していきましょう。